KAMINEスタッフブログ

【集中連載】時計作りの神髄 グルーベル フォルセイ ワークショップレポート 第三回・仕上げ部門編

WATCH MEDIA ONLINE に連載企画で『グルーベル フォルセイのワークショップレポート』が紹介されました!


ワークショップの概要と福利厚生・部品製造部門についてお伝えしたグルーベルフォルセイワークショップレポート。
第三回目の今回は、ユニークな設計と共にグルーベルフォルセイの特徴である超絶技巧の仕上げを支える仕上げ部門についてお伝えします。

 

部品製造部門の向かい側、1階のもっとも広い部屋に、仕上げ部門(デコレーションデパートメント)が配されています。
部品製造部門で製造された部品は一度組み立て部門に送られ、エボーシュの状態で組み立てて調整・動作確認を行った後、分解されてパーツ単位で仕上げ部門に送られ、仕上げを施した後組み立てを行う、いわゆる“2度組み”と呼ばれる手法を用いて、芸術作品のような美しさと、時計として必要な信頼性・精度を両立しています。

部品製造部門のレポートでも紹介したように、エボーシュの状態では面取りが行われておらず、90度の角度で切り出されているエッジに対し、全て手作業で面取りを行って仕上げていくことを信条としています。
これは古典的な時計製造に範をとった方法で、現在ではあらかじめCNCで面取りっぽい形にしておくなど、もっと効率の良い方法があるのでは?と伺ったところ、人が作るからこその完璧さを目指しているということでした。
これについては、優劣というより信念の話で、彼らが求めていることと、それを理解し、情熱を共有している顧客がいる…と言うことだと思います。

道具自体は伝統的な時計製造のスタイルを踏襲しています。
金属やすり、エメリーペーパー(目の細かい紙やすり)、ダイヤモンドペーストとジャンシャンと呼ばれる植物の茎。

調整済みの部品を磨きの作業で歪ませてしまうことがないよう強固な治具に固定されています。

各々が自分のスタイルでやり易い方法を模索し、よりよい作品を目指しています。

カスタムされた作業台。

作業にあわせて作られた工具。

最後の確認は実体顕微鏡を用いて40倍~60倍で傷がないかを詳細にチェックします。
この基準は他社と比べても厳格で、グルーベルに転職すると最初に驚くポイントとのこと。
それで嫌にならない?との質問には、情熱を共有してより良い作品を作り出そうとしているので問題ないとのこと。

仕上げが行われた部品。

グルーベル フォルセイのムーブメントの特徴として、作り方は極めて伝統に忠実な方法を取っていますが、仕上げやブリッジの造形は現代的な構造になっています。

高級時計でよく見かける、コート・ド・ジュネーブはほとんど使われず、傷が目立ちやすいのでより難易度が高いサンドブラストによるサテン仕上げと、エッジ部を徹底的に磨き上げたミラー仕上げの面取りのコントラストを特徴とした独特のデザインコードです。
また、硬い素材(スチール)を徹底的に磨くことで黒光りするブラックポリッシュもブリッジなど最も目に付く場所に使われています。

ブリッジの造形も、装飾的な掘り込みや曲線ではなく、機能に沿いつつも、ユニークな”グルーベルらしい”という表現が似合う特徴的な形です。

特徴的なデザインを見てみましょう。

ダブルトゥールビヨン30°のインベンションピース、“最も長い”トゥールビヨンブリッジを持ち、このブリッジはブラックポリッシュで仕上げられています。

拡大しても傷もムラもないブラックポリッシュのブリッジやトゥールビヨンのケージ。
サンドブラストで仕上げられた地板がそのまま文字盤の役割を担っています。

ダブルトゥールビヨン30°を2個連結したクアドラプルトゥールビヨンのインベンションピース。
ブラックポリッシュのトゥールビヨンブリッジ、サンドブラストの地板、トゥールビヨンを連結するディファレンシャルギア…どの要素も完ぺきに仕上げられています。

トゥールビヨン24セコンドコンテンポラン。
サファイアのトゥールビヨンブリッジにゴールドシャトンによってトゥールビヨン24セコンドが浮いているような効果を生んでいます。

トゥールビヨン24セコンズ エディション・イストリック。
ブラックポリッシュのブリッジ、ディスク表示のスモールセコンド・パワーリザーブ表示でまた違った表情。

文字盤全体がブラックポリッシュのクアドラプルトゥールビヨン。

自然光をとらえて見せる表情はとても写真に写し込めません…

エナメル文字盤のトゥールビヨン24セコンドビジョン。
完璧に仕上げられたトゥールビヨンブリッジに手が写り込んでいますね…

2019年の新作、アートピース エディション イストリーク。
ミニマルな時分表示で、ダブルトゥールビヨン30°をアートのように堪能できる作品。
ブラックポリッシュで仕上げられたブリッジは圧巻。

GMTクアドラプルトゥールビヨン。
ブラックポリッシュ、サテン仕上げ、面取りの競演。

拡大しても一分の隙もありません。

写真でお伝えしてきましたが、とてもすべては伝えきれないのでぜひ実機をご覧ください。

【グルーベル フォルセイに関する問い合わせ】
カミネ 旧居留地店
〒650-0036 兵庫県神戸市中央区播磨町49 旧居留地平和ビル1F
TEL.078-325-0088
OPEN.10:30~19:30(無休)
http://www.kamine.co.jp
kyukyoryuchi@kamine.co.jp

 

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COLUMNコラム

篠田哲生

最高峰の時計ブランド「パテック フィリップ」の魅力とは何だろうか?
数々の仕事を通じてこのブランドに出会い、魅了され、遂にはユーザーとなったライター、ウォッチディレクターの篠田哲生氏が、自身の目と経験から感じた、"パテック フィリップのこと"について語る。

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