皆様は腕時計の機能として用いられている
「GMT」という言葉をご存知でしょうか。
時計雑誌などでもたびたび出てくる用語ですので、気になっている方も多いのではないかと思います。
今回のブログでは、この「GMT」についてご説明したいと思います。

GMTは“Greenwich Mean Time(グリニッジ・ミーン・タイム)”の略称で、
イギリスのロンドン郊外にあるグリニッジ天文台を子午線として、
国際的な基準時刻として採用されています。
1884年に世界を24の時刻帯(タイムゾーン)に分ける“標準時”という考え方が国際的に認められ、その中で国によって一時間ずつズレが生じる“時差”が生まれたことにより、本来のGMTの意味である「グリニッジ標準時」が定着しました。

腕時計のGMT機能とは、主に第二時間帯もしくは第三時間帯の時刻を表示できる機能のことをいいます。
本来のデザインとは異なる時針で文字盤やベゼルにある目盛りを指すことにより、他の国の時刻を一目で知ることができるのです。

多くのGMT時計は、長針・短針・秒針に加え第4の針として“24時間で一周する針”すなわち「24時間針」あるいは「GMT針」が設定されていることがほとんどです。
12時間で一周する時針は今いる場所の時刻を表しており、24時間で一周するGMT針は他の国の時刻を表します。
このGMT針の存在によって、海外の旅行先や出張先といった時差のある地域の時刻(ローカルタイム)と自分の国の時刻(ホームタイム)を、同じ文字盤上で同時に把握できるのがGMT機能です。

また、多数の都市の時刻が分かる「ワールドタイム」という機能を持った時計も存在します。
この時計は、文字盤上に世界の都市名が時差順に細かく記載されています。

時刻を表示する時分針そのものが複数ある腕時計もあります。
別の地域の時間を知ることができるという点では似ていますが、
GMTとは少し違う機能です。

ワールドタイムより一層シンプルに、二つの地点に絞って分かりやすく表現されているのが「GMT」と呼ばれます。

「GMT針」を装備した腕時計の時刻の読み取り方は至って簡単です。ここでは上の画像の時計を例にとって、主流とされる見方をご紹介します。

　ローカルタイムの時刻はGMT針と分針で読み取ります。
赤いGMT針が文字盤の外周にある24時間計で指している時間＝午前10時と読み、分はそのままセンターの分針を読んで10分。
午前10時10分となります。
タイムゾーンで決められた時差は原則的に一時間単位なので、
分と秒は共通です。
ホームタイムは通常の時計と同じ読み取り方をしますので、
この時計でも同じく10時10分となるわけです。

　これら複数の時間帯を表示する腕時計が生まれた背景には、
で多くの人が長距離移動をするようになったことにあります。
海外出張や旅行で重宝される機能です。
続いてGMT機能を搭載した時計をいくつかご紹介いたします。

PARMIGIANI FLEURIER
トンダ PF GMT ラトラパンテ 40mm
ステンレススチール/プラチナ950(ベゼル)/自動巻き
Ref. PFC905-1020001-100182 ￥ 3,509,000（税込）

パルミジャーニ・フルリエのトンダPF GMT ラトラパンテは日付表示も秒針もない非常にシンプルなデザインで、一見すると二針時計に見えます。
ところが、ラグの8時位置にあるボタンを押すと、
ホワイトゴールドの時針が一時間単位で動き、旅先のタイムゾーンに合わせることができます。
その際に、ホワイトゴールドの時針の下からローズゴールドのセンター時針が姿を現し、ステイした針の位置はホームタイムを示します。

　第二時間帯を設定する必要がなくなると、
リューズの先端にあるボタンを押すことで、ホワイトゴールドの時針がローズゴールドの針の上に一瞬で重なり元の位置に戻ります。
このような仕組みによって、通常時はホームタイムのみの表示に戻るのです。
ホームタイムだけを示しているときはコンプリケーションを意識せず、
ラグジュアリーな雰囲気を秘めたシンプルな二針時計としても使用できます。

　斬新な表示の在り方で、スポーツウォッチというジャンルに新たな局面をもたらすモデルです。
易しい使い方の機能は実用的で、ユーザーに分かりやすいのが魅力です。

モデル名の“ラトラパンテ”はフランス語で「追いつく、再会する」という意味です。

Bell & Ross
BR 05 GMT/41mm
ステンレススチール/自動巻き
Ref. BR05G-BL-ST/SST ￥ 649,000（税込）

ベル&ロスのGMTは、精度と視認性に優れているのが特徴です。
二つのタイムゾーンを同時に表示し実用的であるだけでなく、
卓越した美しさが魅力的です。
第二時間帯は24時間表示のインナーベゼルの上を一周することで記されます。
この表示は日中(午前6時～午後6時)と夜間(午後6時～午前6時)が二色のカラーで表現されています。
時・分・秒・そしてＧＭＴ針の合計4つの針が使用されており、
瞬時に時間を読み取ることが可能な赤色のアロー型針が使われています。

Grand Seiko
SBGE248 44.0mm
ステンレススチール（一部18Kイエローゴールド）
スプリングドライブ/自動巻（手巻つき）
Ref. SBGE248 ￥1,430,000（税込）

こちらはグランドセイコーより、回転ベゼルを使用する事によって第３時間帯まで読み取る事の出来るGMTウォッチです。
ブルーとゴールドのコントラストが非常に綺麗で視認性も高めてくれます。

グランドセイコー史上初となる18Kイエローゴールドは回転ベゼルやリューズ、中留のGSロゴワッペンにも大胆に採用され、
従来のスポーツコレクションにはない艶感のあるデザインを実現しています。

ベゼルの表面には、リング形状にくり抜いた青色のサファイアガラスを使用したことで、華やかなデザインの中に硬質な透明感と奥行き、深みが現れています。

GMT表示機能により海を越えた先のタイムゾーンを指し示す機能性も兼ね備えたこのモデルは、リゾートシーンはもちろんビジネスシーンにもふさわしい一本と言えます。

ヴァシュロン・コンスタンタン
オーヴァーシーズ デュアルタイム 41.0mm
ステンレススチール/自動巻き/パワーリザーブ3日間
Ref. 7900V/110A-B333
￥3,850,000（税込）

続いては世界３大ブランドのひとつヴァシュロン・コンスタンタンより大人気のオーヴァーシーズ。
GMT針の先端に赤を使用し、白の文字盤、黒の文字盤に映える配色となっています
９時位置には昼夜表示も兼ね備えておりGMT針が指すホームタウンが午前なのか午後なのかが一目でわかります。

ヴァシュロン・コンスタンタンの象徴であるマルタ十字は、ベゼルとストラップのデザインにさりげなく表現されており、ステンレススティール、レザー、ラバーの３本のインターチェンジャブル・ストラップとクラスプで、お好みの時計にパーソナライズする事も出来ます。

ジュネーブの高級時計製造技術の象徴であり、原産地、高品質クラフトマンシップ、信頼性の代名詞でもあるジュネーブ・シール取得モデル。

PATEK PHILIPPE
コンプリケーション38.5mm
ホワイトゴールド/自動巻き
Ref. 5231G
￥11,924,000（税込）
※価格はいつでも変更されることがあり、約定されたものではありません。

続いてワールドタイムの時計を紹介します。文字盤の外周に都市名が刻まれ、
その内側に1から24（12・24は太陽・月の表示）までの数字が書かれた回転する円板が備わっています。
都市名と、回転する円板上の数字（時刻表示）を確認することで、その都市の現在の「時」を知ることができます。

10時位置にあるプッシュボタンで都市名が記載された都市ディスクを回転させる事ができ、現在滞在している都市を１２時位置に合わせると容易に時刻合わせができます。

1930年代にルイ・コティエがワールドタイム機構を発明して以来、
パテック フィリップの名高いワールドタイム・ウォッチは、
しばしば世界のさまざまな地域を描いたクロワゾネ本七宝の地図で装飾されてきました。
このダイヤルデザインは、ルイコティエ式といわれ他社でもよく使われています。

腕時計に求める機能は、所有される方のライフスタイルによってさまざまですが、GMT機構を搭載したモデルは利便性だけでなく、その雰囲気と印象を楽しみながら、離れた土地の時間を知り、想うことにロマンがあり、手にする人の想像力をかき立てることでしょう。
世界を自由に旅することが難しい今だからこそ、他の土地の時刻を表示してくれる腕時計に思いを馳せてみるのも良いかもしれません。