出向チームから一人別れて、時計の聖地ヴァレ・ド・ジュウへ。
ブルガリのグランドコンプリケーションファクトリーを
視察して来ました。今年は特に気になるモデルがあり、
楽しみにしていました。なかなか見る事のできない
ファクトリーの素晴らしさをご紹介いたします。
今回は、美しい湖畔の街ヌーシャテルに宿泊しファクトリーのある山間部を巡りました。
1日目 ラ・ショード・フォン セージュレニエ
ラ・ショード・フォンのセージュレニエにある
ケース&ブレス工房。
こちらでは、80名の従業員が働いており、
ブルガリウォッチのケースと
ブレスレットの90%をこの工房で製造しています。
主に最新のCNC旋盤を使った切削加工と熟練工による
研磨仕上げを行っています。《写真:最新のCNC旋盤》
《特殊な切削をする為の美しい工作歯》
《CNC旋盤によって精密に加工されたケース》
写真の様にセルペンティのスネークヘッド、ブルガリブルガリの微妙にアールのかかったベゼル、
110の面を持つオクトのケースなど様々なケースを最新のCNC旋盤を駆使して製造しています。
ブルガリウォッチのケースは冷間鍛造によって金属の密度が高く堅牢で、大変美しく仕上がります。
また、長年愛用頂いても再仕上げをすれば再び美しさが蘇ります。
加工されたパーツを見て、御同行させて頂いた
トップディーラーの方もクオリティの高さに
納得されていました。
オクト ステンレスケース(右は私物です)
私も普段、オクトソロテンポの38ミリを愛用していますが、
私の時計もこの工房から来たかと思うと感慨深いです。
オクトのケースは、最新のCNC旋盤を使っても
切削加工時間が他のモデルより長く手間がかかっていました。
スクープ!
オクトフェリッシモ ミニッツリピーターのチタンケース!
実は、このツアーの前に参加していたBASELWORLD2016で、2日間にわたり
各ブランドの新作を見てきたのですが、そこでブルガリから、今年1番の話題作と言っても良い
世界最薄のミニッツリピーターが発表されていました。
私達は、あのクリストフ・ババン氏から直接プレゼンを受けてその革新的な
ミニッツリピーターに魅了されました。
なので、このファクトリー見学の一番の目的は、2日前に発表されたばかりの
このモデルの情報を探る事となりました。
早速、工房の責任者に、どうしてもミニッツリピーターのパーツが見たいと掛け合ったところ、
出来たばかりのケースを特別に見せて貰えました。このケースは世界限定の為、
僅か50個しか製作しません。また、先にも書いたように、ステンレスでも手間のかかる
オクト用ケースをグレード5のチタンで作るのにはかなりの時間を要します。
仕上がった状態を見られたのは幸運でした。
グレード5のチタン製ケースは、非常に強固で有りながら、完成品で46gと言う圧倒的な軽量。
ケースだけの状態でも近未来のガジェット的な存在感があります。
こんな早いタイミングで話題作の情報をお伝え出来て、ファクトリーに来た甲斐がありました。
話は戻りますが、この工房ではCNC旋盤がオートメーションで動いており、
あまり人がいません。そんな中、80名の従業員の内、20名が集中している部署があります。
此処は、CNC旋盤によって100分の1ミリの精度で
寸分違わずに作られたケースやブレスレットの
最終的な仕上げ、研磨作業をしている部署です。
時計に関わる仕事をしていると研磨(ポリサージュ)に異常な興味、執着を持つ人がいますが、
私もその一人です。熟練工による研磨は、外装、文字盤、ムーブメントと全てのパーツで
美観を決定付けますし、その集約が時計を芸術品へと昇華させます。
また、研磨は人間が一番うまい。
一台数千万の工作機械でどれほど精密な加工をしても、熟練工の”研ぐ”技はその上を行きます。
そこが好きです。
なので研磨作業を見学出来る時は、どんな研磨材を使っているのか気になってしょうがありません。
知ってどうするのか自分でも答えられませんが、、、
因みに写真右下の研磨材は日本特殊研磨株式会社さんの製品です。大半の研磨材は
スイスで調達出来るが、一番目の細かいこの研磨材は日本製だと熟練工が言いました。嬉しいです。
組み立て部署では、女性ばかりが働いております。先ほどの研磨作業の部署は
男性ばかりだったので相性があるのかもしれません。
写真の工具はトルクエスケイプ式のドライバーで、ネジを締める際に最適なトルクをかけ、
しっかり締めてもネジ頭を傷めない代物です。
これも最新の工具ですが、プラチナ製のネジを締める時は、逆に普通のドライバーで
指先の感覚を研ぎ澄ませて締めていました。
この様にネジを締めると言うシンプルな作業の中にも、最先端の工具や、
それを凌ぐ熟練工の技術があり、それらを数十時間、数百時間かけて作る製品に、改めて価値を感じます。
ケース&ブレスレット工房は此処まで。
午後は同じラ・ショード・フォンにある文字盤工房に向かいます。