続きまして、こちらはラ・ショード・フォンにあるマニュファクチュール・ド・カドラン。
文字盤とインデックスを製造しています。
責任者の方が製造方法について、詳しく解説して下さいました。
基本的に時計の文字盤は真鍮製が多く、時計の機能やデザインによって成型し、
それに下処理を丹念に掛けます。何回もの処理によって美しくなった下地に様々な
デコレーションを施し芸術的な文字盤が出来上がります。
一枚の文字盤の製造には、デザインの美しさだけでなく、想像以上の手間暇がかかっています。
まずは、ベースとなる真鍮に穴を開けたり、窓枠を切ったりしていきます。
シェル文字盤の切削も全てこちらの工房で行います。
下処理の終った文字盤にムーブメントと固定する為の足が取り付けられます。
足はとても細いので、簡単に取れない様に加工します。この細い足の中芯は銀で出来ており、
熱を加えると銀が溶け出して文字盤と固着します。
最終的な文字盤の仕上げには様々な手法がありますが、美しい発色の文字盤は
ガルバニックメッキ法が用いられることが多いです。
非常に耐食性が高く、文字盤の美しくさを長く保ちます。
右下はブルガリの文字盤の高いクオリティが出るブラックラッカー文字盤。
漆黒の鏡面文字盤は一切の妥協も許されません。
もし、微細なキズや表面の不均整などあれば、美しく無く製品となりません。
此方も金属パーツと同じ様に熟練工による完璧な研ぎが施されます。
また、文字盤には時刻だけで無く様々な表示の為のインデックスがあります。
この小さなパーツにも芸術的クオリティが求められます。
これらの小さなパーツをつくる作業は、とても繊細で、特殊な工具を使って行われます。
その工具を作っているのが、工房の片隅で作業をしているこのおじさんです。この道40年!
おじさんは普通ですが、作る工具には美しさが有ります。
そして、ここでもオクトミニッツリピーターの文字盤を探したのですが見つかりません。
しつこく聞いていると、原材料のチタンプレートと切削途中の文字盤を見せて頂けました。
オクトミニッツリピーターの文字盤は数字部分が切り抜かれており、
それによってムーブメント側のゴングで打ち鳴らされた音が、文字盤側に抜け、
ケース内部全体で共鳴させる仕掛けです。世界最薄でありながら最大限の音量を出せる
キーポイントなので、是非見てみたかったのですが、残念です。
しかし、地板を触った感触は、極めて薄く軽量ですが、捻るとしなやかにたわみます。
良い音がしそうな感じがします。
ファクトリーツアー初日の今日は、ブルガリファクトリーのレベルの高さに驚かされましたし、
お目当てのミニッツリピーターのパーツも見られて、大変満足しました。
明日はいよいよファクトリー最深部のヴァレ・ド・ジュウへ向かいます。