2016年 9月3日—–
スイスより神戸の地へやって来た彼はステファン・フォルセイ。
名高い凄腕の時計師である彼はスイス・ヌーシャテル ラショードフォンに工房を構える「グルーベル・フォルセイ」の経営者の一人です。
海外ゲスト来社時に依頼する「ゴールデンブック」へ直筆のメッセージを書く様子です。
彼は、カミネ110周年記念プロジェクトのひとつとして取り組んでいる、若手時計師を育成するためのプロジェクト「N’aissance de Montres ~Le Garde Temps(ある時計の誕生)~」 の立役者の一人。
プロジェクトの詳細は http://www.kamine.co.jp/legardetemps-project/
この日、神戸の某所にてプロジェクト参加記念イベントを開催。フォルセイ氏の来神はこのためでした。
着席しているのは左から ピュアリスト・プロ 通訳の北後氏、ステファン・フォルセイ氏、弊社・上根、Chronos・GOETHE他のライター篠田哲生氏。
多くのお客様とプレス関係者を前に、やや緊張の面持ちでセッションは始まりました。トークはこのプロジェクト誕生の背景から、スイス時計業界の現在について展開されます。
カミネがこのプロジェクトに参加するきっかけは、敬愛するフィリップ・デュフォー氏の一声でした。
この時計は、今も非売品として大切に保管している創業100周年・2006年に製作した彼の名作・シンプリシティのスペシャルピース。
しかし—–
10年の歳月を超え、同じように記念時計の製作を依頼しても、デュフォー氏はなかなか首を縦に振りませんでした。
諦めかけた時、ふいに彼が持ち出してきた話がこのプロジェクトの存在。
(イベントへ寄せて、デュフォー氏よりメッセージ映像が届きました)
スイス時計界は、クォーツショックで技術が一度途切れ消滅しかけた苦い経験で後世に技術を残すことの難しさをよく分かっています。
しかしながら、この時世で近年の若手時計師たちは 時計づくりを非常にクールにとらえるようになってきました。
それはこの数年で飛躍的に進化した工作機器による製造のウェイトが高まったことや、マーケティングによる抑制などが大きな要因です。
これは時計づくりとしての純粋なロマンが失われていく寂しさとともに、複雑時計のオーナーにとっても良い将来とは言えません(メンテナンスできる人材が不在となるからです)
そこで立ち上がった TIME AEON財団 「N’aissance de Montres ~Le Garde Temps~」プロジェクト。
プロジェクト参画は、「11本の時計」を扱うこと。
記念すべきファーストピースは、香港・クリスティーズにて1億6千万にて落札。
全部で11本製造される最後の1本が約2年後にカミネに納品されます (※完売いたしました)
会場で披露されたプロトタイプ、見るのは最初で最後の機会。
CHF450,000+TAX トゥールビヨン搭載
このような高額で取引されるプロダクト、しかしそこにほぼ収益はありません。お客様にお納めする時計の収入は、プロジェクト基金に充てられるからです。
日本の代理店も存在しませんから、当然リスクもあり、仕事ながらある種賭けでもありました。
だからこそ、110周年を記念する事業として取り組むべき光栄な縁であり、仕事であると弊社社長・上根は考えました。
時計師になる大志を抱く若い時計師を支援するため
そして、伝統的な手作業による時計づくりが後世にわたっても「夢あるもの」であるよう願いを込めて。
カミネがこのプロジェクトへ参加することは大海にもたらすほんの一滴にすぎません。
しかしながら、少しでもスイスの地場産業の役に立つことができれば
それは、心から光栄に感じることであると考えます。
美しいジュウ渓谷と、職人たちに敬意を表して…
※ 本イベント内容は 10/3発売「クロノス日本版」10/20発売「PAVONE」・10/24発売「GOETHE」などへ掲載を予定しております。