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時計作りの神髄 グルーベル フォルセイ ワークショップレポート

WATCH MEDIA ONLINE に連載企画で『グルーベル フォルセイのワークショップレポート』が紹介されました!

 

第一回・工場概要・福利厚生編 

スイス取材紀行にて、念願叶って訪問することができたグルーベル フォルセイのラショードフォンワークショップ。

以後、数回に分けてワークショップの紹介とともに、グルーベル フォルセイの時計作りの神髄、いかに妥協のない制作が行われているかと言う事を少しでもお伝えできればと思います。
第一回目の今回は、工場概要・福利厚生編として、”革新”と”伝統”をミックスした高度な設備、才能ある時計師が伸び伸びと働くことのできる福利厚生についてお伝えします。

グルーベル フォルセイのワークショップと言えば、カタログやパンフレットでもご覧になったことがあるかもしれませんが、独特の30度の傾斜の屋根を持つガラスづくりのハイテクな工場を思い出す方が多いでしょう。

しかし、このガラスづくりの建物は”革新”と”伝統”の一面でしかなく、もう一面の”伝統”を象徴しているのが18世紀に建てられた農家の母屋を買い取って作られた本館です。

1714年に作られたこの農家の建物は、取り壊されることが決まっていたそうですが、ちょうど規模を拡大して新社屋を建築しようとしていたグルーベル フォルセイが伝統を守るために周りの土地ごと購入し、農家の建物を本館としてリノベーションしたのです。
そして、隣の丘の外観をそのまま保つために一度大きく掘り下げ、半地下構造で本館から見ると”丘がそのままある”というコンセプトのハイテク工場を作り上げました。
リノベーションには新しい材料も使われましたが、なるべく18世紀当時の木材を再利用すること、コストよりも伝統を守ることを重視して行われたそうです。
ガラス貼りの工房の方も、コンクリートと鉄筋・木材をうまく組み合わせた構造で、外観のハイテクさとは裏腹に、工房内は伝統的な木目調の工房になっています。

グルーベル フォルセイにはリシュモングループから20%の資本参加が行われていますが、この建物に関しては全て”自腹”、実は金額も知っていますが、さすがに公開はしません…が時計産業の工場かつ、年産が限られるハイコンプリケーション専業の工場としてはかなりの金額と言っていいかと思います。

それぞれの建物を見ていきましょう。

まず本館から。
もともと農家の建物で牛や羊などの動物と人間が暮らすための家だったようですが、外観と基本構造を維持したままリノベーション、受付・会議室・管理部門などが入っている建物になっています。

また、ムーブメントから新規設計のユニークピースを作っている”らしい”ユニークピース部門もこの建物内にあり、時計師を表すキャビノチェの語源となった屋根裏部屋(キャビネ)に配置されています。

屋根裏部屋に時計師部屋があったのは天窓から自然光が入り、作業がしやすいからです。
ユニークピース部門は超VIPのワガママを叶える夢の工房ですが、その分秘密は厳重で、残念ながら外からの写真以外はNG…すさまじいものが作られているのでしょう。

本館とガラス貼りの工房は地下通路でつながっています。
大型の工作機械を納入するための搬入口などはありますが、基本的には全ての出入りは本館側から行うようです。

ガラス張りの工房は3階建て、傾斜している構造なので1階が一番広く、2階、3階に行くにしたがって床面積が減り、それに合わせて各階の機能が決められています。
外側がガラスなので、自然光を取り込んで明るく、”病院グレード”の空気清浄機と空調が設置されており快適そのものです。
日差しが強すぎるときや、西日が差すときブラインドシャッターで明るさを調整できます。

1階は本館から向かって右に部品製造部門、コンピュータ制御の工作機械(フライス・旋盤・放電加工機など)を備え、ムーブメントのもととなるエボーシュを作っています。
その作り方も”一味違う”ものなのですが、それは後ほど別の章で…
ひげゼンマイ以外はすべて作ることができる規模の工作機械を備え、少数多品種生産に対応できるような体制が作られています。

向かって左側はロジスティクス(流通)と仕上げ部門、仕上げ部門はエボーシュを部品製造部門から受け取り、調整と仕上げを行います。
徹底した磨き上げによって単なる金属の塊から美しい輝きを持つ時計部品へと変化します。

2階は設計部門なのですが、ステファンがちょうど出張に出ていたためか、今回は立ち入りNG、いつかはいろいろお話を伺ってみたい!

3階(屋根裏部屋)がユニークピース部門と同じく、組み立てを行う組み立て部門と品質保証部門になっており、伝統的な時計師机に向かった時計師がムーブメントを一つずつ組み立てています。
もちろん、分業ではなく、一つのムーブメントは最初から最後まで一人が組み立てます。

出来上がったムーブメントは組み立て部門の隣にある品質保証部門でケーシングした状態で動作を確認し、問題がなければ送り出されます。
これらの各部門については以後の特集連載の中で、それぞれの詳細を追っていきます。

さて、工場がガラス張りで開放的な雰囲気、最新設備を備えて快適に働けそうな環境ですが、中の会社組織も同様に開放的です。
私がうかがった朝10時には社員が本館のロビーに集合し、ざっくばらんに雑談していました。

これは、部門の垣根を越えて意見交換をするために推奨されていることで、よりスムースな交流の為に会社負担で朝食(軽食)が提供されるという、社員としてもうれしい福利厚生です。

このほか、昼食・夕食も提供されるそうで、私がいただいた”来客用”の昼食とは盛り付けが違うものの、基本的に料理は一緒と言う事で、毎日この品質の食事が出るなんて…とうらやましく感じました。

もちろん、受託開発も行っているので、”秘密”が漏れないようにしなくてはいけませんが、社員を信頼して漏れないようにしていると感じました。

さて、まずは概要をお伝えしました。
次回からは、いよいよ各部門をより詳細に追っていきます。

【グルーベル フォルセイに関する問い合わせ】
カミネ 旧居留地店
〒650-0036 兵庫県神戸市中央区播磨町49 旧居留地平和ビル1F
TEL.078-325-0088
OPEN.10:30~19:30(無休)
http://www.kamine.co.jp

 

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COLUMNコラム

篠田哲生

最高峰の時計ブランド「パテック フィリップ」の魅力とは何だろうか?
数々の仕事を通じてこのブランドに出会い、魅了され、遂にはユーザーとなったライター、ウォッチディレクターの篠田哲生氏が、自身の目と経験から感じた、"パテック フィリップのこと"について語る。

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