爽やかな初夏のジュネーブ。
去る6月2日、数か月ぶりに訪れました。
SIHHが開催される1月は天候の悪い日が殆どで寒く暗いイメージですが、このシーズンの景観は素晴らしく、自然の美しさと古くから国際都市として栄える香り高い文化を感じます。
レマン湖を囲んでアルプス山脈、遠くにはモンブラン。フランス側の湖畔にはエビアン、その対岸にはローザンヌの街が臨めます。
そんな街並みを一望できる一等地。
レマン湖の名物、噴水が真正面に見える位置に パテック フィリップ ジュネーブ本店があります。
その建物の荘厳さと店内は、圧巻といえるものです。
パテック フィリップ本店の通りに面したショーウィンドウ。
テーマは数か月毎に変わります。
現在は、アートペインティング(絵画)
パテック フィリップの大きな魅力は、その芸術性にあります。
エナメル細工、細密画、クロワゾネ、シャンルベと呼ばれる古典的技法は、高級時計の魅力を更に引き上げています。
パテック フィリップ社は、長い歴史においてムーブメント機構で時計産業に革新性をもたらしてきた事もさることながら、高い芸術性を有した素晴らしい工芸品的な時計を世に送り出してきたことも有名です。
今回はその代表格のひとつ、クロワゾネを施した時計をご紹介します。
毎年バーゼルワールドのパテックフィリップのブースには、様々な技法で装飾を施された腕時計、懐中時計、テーブルクロックが並びます。
レアハンドクラフトと呼ばれるこれらは、ほぼ一点ものに近いため、カタログには載りません。
このレアハンドクラフトのシリーズが、その希少性と芸術性の高さから、近年 更に注目され人気が高まっているのです。
中でも毎年特に注目されるのは、クロワゾネという技法で絵が描かれたエナメル文字盤の素晴らしい商品で、例年 発表されます。
時計の文字盤に使われる技法としてのエナメルとは、金属の素地にガラス質の釉薬を塗り800度~850度程の高温で焼き固めたものを言います。
何度も色を入れては焼く為、最後の最後に割れてしまったり、思っている色が出なかったりと非常にリスクが有り、完成への道のりは困難を極めます。
写真は、歴史的に有名なパテック フィリップのクロワゾネ 懐中時計をコースターにプリントしたものです。
日本語に相当する呼称は七宝焼きですが、これは七色使っているという意味ではなく、法華経の七宝(七つの宝)程に美しい焼き物であるというところから付いた言葉とのことです。(諸説あり)
日本語では芸術品、装飾品の場合は七宝焼きと呼ばれ、工業製品などでこの技法が使われると、琺瑯(ほうろう)と呼ばれるのがその世界では一般的です。
クロワゾネという言葉の語源は「囲い」や「仕切り」を意味するフランス語から来ており、日本語では有線七宝もしくは金線七宝という言葉がこれにあたります。
文字通り直径0.5ミリにも満たない細い金のワイヤー画のアウトラインに沿って折り曲げたものを文字盤の上に貼り付け、一度焼いて固めます。
描かれた絵のアウトラインの役割と、違う色の釉薬が混ざらないための仕切りの役割を果たすのです。
(写真は参考)
温度によって凝固する釉薬。
色を塗っては焼く事を何度も繰り返すため、その手間と労力は、絵画のように、一点一点に個体差も生んでいきます。
気の遠くなるような作業であるため、七宝画家はその多くが女性のアーティストが中心となり、スイスの伝統工芸、そしてパテック フィリップの伝統工芸を継承しています。(参考写真)
写真は、今年の新作、ワールドタイム・ミニット・リピーター
5531R-001です。
ご存知の通り、ミニットリピーターはパテック フィリップのグランドコンプリケーションの頂点ですが、それに初めてワールドタイム機能が搭載されました。
更に、文字盤はクロワゾネで描かれ、レアハンドクラフトであり、ミニットリピーターであるという事で発表と同時に大きな話題となっています。
カミネ・トアロード店2F パテック フィリップ・フロアにつながる螺旋階段に飾られている、名作クロワゾネ5131のカラーコルトン。
この5131クロワゾネ ワールドタイムは、レアハンドクラフトではなく、カタログに載っている
レギュラーモデルです。
しかし1点ものではないというだけで、製作の難しさはレアハンドクラフトと同じ。
その為、生産数はやはり非常に少なく、入手困難なモデルとなっています。
是非、カミネ・トアロード店2F パテック フィリップ・フロア へお立ち寄りください。
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