Vol.3
パテック フィリップ・ミュージアム

 スイスのジュネーブ市はスイス時計産業の中心地であり、美しいレマン湖沿いのビルには様々な時計ブランドのネオンサインが輝いて、湖面に美しい情景を作り出している。S.I.H.H取材の前に、駅前からトラムに乗ってある場所を目指した。それが「パテック フィリップ ミュージアム」である。国を挙げて時計文化を大切に守っているスイスでは、全国各地に時計に関する博物館があるが、私企業がこれだけ大規模な時計博物館を所有するというのは珍しいことだという。

 パテック フィリップ・ミュージアムは市内の中心エリアにあり、中規模なビルが並ぶ静かな地区にある。優雅な雰囲気のエントランスで入場料を支払うと、まずはエレベーターで4階へ。ここには創業当時から現在までの顧客台帳が展示保管されている。歴史的著名人の名が書かれているのは当然として、現代の購入者もまた台帳の中で歴史の一部になるということだ。しかもこうやって顧客と時計をしっかり管理しているからこそ、古い時計が持ち込まれた場合でも、シリアルナンバーを調べればいつどこでだれに販売した時計であるかがわかる。それは正しくメンテナンスしてもらえるだけでなく、真贋鑑定をする上でもメリットがあるだろう。

 3階に降りると、そこにはジュネーブの時計産業の歴史が詰まっていた。エナメル装飾が施された美しい懐中時計が数多く展示され、女性がアクセサリーとして楽しんだブローチやペンダントの形をした小型の時計もある。さらには天才時計師たちが作ったからくり時計も展示されている。しかもこういった時計は、全て完全に修復されている。パテック フィリップはこうして過去から時計を学び、現代へと文化を継承しているのだ。

 そしてその感動は、2階のパテック フィリップフロアに行くとさらに強まる。ここには過去から現在までの傑作たちが展示されているが、そこかしこに現代の時計デザインに影響を与えたことが明確な過去の傑作たちが並んでいる。パテック フィリップの歴史とは、時計の歴史そのものであるのだ。さらに時計界の至宝である「グレーブスウォッチ(1933年製)」や創立150周年記念で製作された懐中時計「キャリバー89(1989年製)」の貴重なプロトタイプも展示されている。

 なぜパテック フィリップは世界最高峰なのか? パテック フィリップ・ミュージアムで感じた歴史の積み重ねこそが、その理由の一つなのだと実感したのだった。(Vol.4へ続く)

COLUMN

最高峰の時計ブランド「パテック フィリップ」の魅力とは何だろうか?
数々の仕事を通じてこのブランドに出会い、魅了され、遂にはユーザーとなったライター、ウォッチディレクターの篠田哲生氏が、自身の目と経験から感じた、"パテック フィリップのこと"について語る。
【今後の連載予定コンテンツ】
■モンブラン橋のパテックフィリップ本店  ■手にして理解したパテックフィリップの効能  ■やっぱりに気になる「カラトラバ」Ref.5196  ■旅を夢みて「ワールドタイム」  ■女性だったら「Twenty~4」  ■挑戦してみたいバゲットダイヤ×パテック  ■究極のコレクションピース「クロック」

 

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