ストリートのカリスマがハイコンプリケーションウォッチを日常使いしている姿を目の当たりにしたことで、“上がりの時計”から“すぐにでも手に入れるべき時計”となったパテック フィリップ。しかもメカニズム的な楽しみも欲しいので、狙うべきはパテック フィリップが開発した実用機構の年次(アニュアル)カレンダーに狙いを定めた。しかしまだ悩みは尽きない。この年次カレンダー機構のパイオニアであるパテック フィリップでは、何種類もの年次カレンダーモデルをラインナップしているのだ。
時計の選び方には色々なアプローチがあるが、時計愛好家らしくムーブメント重視で考えると、やはりマイクロローター式の「Cal.31-260 REG QA」が好みだ。
マイクロローター式なのでムーブメントがあまり隠れず、パテック フィリップらしい美しいムーブメント仕上げが堪能できるし、大型ブリッジを使った設計にはクラシックな佇まいがあり、独自の品質基準パテック フィリップ・シールに準拠していることを証明する「PPマーク」もよく見える。しかもシリコンをベースとするハイテク素材で作られたガンギ車やアンクル、ヒゲゼンマイを使用している。今でこそ、シリコンパーツは多くの会社で使用しているが、パテック フィリップはその先駆けで、2005年に「アドバンストリサーチ」部門でこの技術を開発した。つまりパテック フィリップのムーブメントの審美性や先進性を年次カレンダーで楽しむなら、この「Cal.31-260 REG QA」が一番ということだ。
しかも時刻表示は、時分秒針が独立した「レギュレーター」。このムーブメントを搭載した「年次カレンダー・レギュレ-ター Ref.5235」は、縦サテン仕上げのダイヤルも印象的で、かなり蠱惑的なモデルとなっている。
しかしパテック フィリップの新時代を楽しむなら、3つ窓ムーブメント「Cal.324 S QA LU 24H/206」を搭載する「年次カレンダー Ref.5205」も気になる。パテック フィリップはグループに属さず、スターン家による家族経営によって歴史と伝統を継承している。現在の社長であるティエリー・スターンは2009年にその座に就いたが、新たなパテック フィリップの旅立ちとして、この「年次カレンダー Ref.5205」を発表した。扇形に配置した年次カレンダー表示だけでなく、ボリューム感のあるラウンドケースやサイドをへこませた立体的な仕上げ、オープンワークを施したラグなど、新しい試みが取り入れられている。クラシックさとモダンさを楽しむなら、このモデルが最適だろう。
だがそもそもは、“パテック フィリップを日常使いする”のが、当初からのコンセプト。スーツを着る仕事ではないし、普段のスタイルもカジュアル系。しかも当時は30代の若者(?)でもあるし、ドレスウォッチよりもスポーツウォッチの方が自分的にはしっくりくる。つまりはラグジュアリースポーツの大定番「ノーチラス」も候補ということになる。
12時位置に2つの小窓(ダブルギッシェ)を持ち、ムーンフェイズ、24時間表示、日付窓をバランスよく組み合わせた「Cal.324 S QA LU 24H/303」を搭載した「ノーチラス Ref.5726A」は、レザーストラップの他に、夏用としてラバーストラップも付属しており、一年を通して使えるだろう。しかもこのムーブメントは表示がコンパクトなのでシンプルなモデルだとダイヤルの間が気になるが、ノーチラスのダイヤルは横縞の水平エンボスが効いているので、間延びせずデザインバランスも良い。
個性派のレギュレーター、モダンな3つ窓モデル、オールマイティなノーチラス。どれもが魅力的な年次カレンダーたちだが、こういった悩む時間もまた、時計選びの楽しみなのだ。